米国では高金利や世界経済の不透明感が続いていますが、商業不動産の売買市場には明確な回復の動きが見え始めました。
不動産調査会社Green Streetの集計によると、2026年上半期に成立した2,500万ドル以上の商業不動産取引は、総額1,640億ドルでした。前年同期の1,260億ドルから約30%増加しています。
500万~2,500万ドルの中規模取引も、前年同期の523億ドルから571億ドルへ9.3%増えました。特に売却側の仲介会社が関与した取引は、前年同期比39.3%増加しています。
高金利にもかかわらず取引が戻っている背景には、金融機関の融資姿勢の改善があります。Goldman Sachsが2026年第2四半期に実行した商業不動産融資は400億ドルで、前年同期比21%増加しました。
買い手の資金調達環境が少しずつ改善し、これまで様子を見ていた投資家が動き始めたと考えられます。
市場を牽引している分野の一つが、AI関連のデータセンターです。生成AIの普及に伴い、大手テクノロジー企業や金融機関が、データセンターと電力インフラへの投資を拡大しています。
一方、すべての取引が市場回復を示しているわけではありません。コロナ禍以降に稼働率が低下したオフィスや、低金利時代に組んだローンの満期を迎える物件など、経営難・借り換え難に伴う売却も取引増加の一因です。
つまり現在の米国市場では、「成長分野への積極投資」と「問題物件の整理」が同時に進んでいます。
投資家にとっては、取引量の増加だけを見て市場全体が回復したと判断しないことが重要です。AI関連施設、物流、生活密着型商業施設などには資金が集まりやすい一方、空室の多いオフィスや多額の改修費を必要とする物件では、価格が安くても慎重な検討が必要です。
物件を選ぶ際は、Cap Rateだけでなく、金利、LTV、DSCR、ローン満期、テナントの信用力、修繕費、売却時の出口戦略まで確認する必要があります。
米国商業不動産は、一律に上昇する市場ではなくなりました。しかし、売主と買主の価格差が縮まり、資金が再び動き始めたことは確かです。市場の変化を見極めれば、高金利下でも魅力的な取得機会が生まれそうです。