税制優遇+高騰する労務コストを避けるため、開発業者が駆け込み申請
ニューヨーク市では、「99戸ちょうど」の集合住宅プロジェクトが異常な勢いで増えています。
Bloomberg と Real Estate Board of New York のデータによると、2024年第3四半期だけで21件の「99戸プロジェクト」申請が提出されました。
これは、2008年〜2023年の15年間でたった13件しかなかったことと比較すると、
まさに“前代未聞”の急増です。
💡なぜ「99戸」なのか?理由は2つ
開発業者が“99戸”にこだわる理由は以下の2点です。
① 税制優遇「485-x」
2024年4月に開始した税控除プログラム 485-xでは、
- 99戸以下 → 20%をアフォーダブル(低価格住宅)にすれば減税対象
- 100戸以上 → アフォーダブル比率が25%に増加
つまり、100戸以上にすると義務が重くなるため、開発業者は「ギリギリ99戸」で取得できる恩恵を狙っています。
② 労務コストの急騰を回避
さらに問題なのは「100戸を超えると急激に上がる労務費(最低賃金)」です。
- 100〜149戸:最低賃金 $40/h
- 150戸以上:最低賃金 $72/h
特に2025年の新しい関税(tariffs)による建設コスト上昇も重なり、開発プロジェクト全体が極端にコスト増となっています。
CoStar NYC アナリティクスのロドリゲス氏はこう指摘します:
「労務費はNYC開発の最重要ファクター。
NYCは労働組合の力が強く、税制優遇にも労務条件が組み込まれている。」
🏗️“99戸ブーム”は続くのか?
しかし、専門家はこの動きが続くかどうかは“未知数”としています。
理由は、2026年以降の制度変更の可能性が高まっているため。
特にニューヨーク市では、市長選で当選した ゾーラン・マムダニ新市長(2026-) が就任予定で、政策方向が読めない状況。
「開発業者としては、新政権の動きを見ながら
インセンティブに対する“発言権”を持ちたいはずだ」
(ロドリゲス氏)
つまり、「485-xの優遇が変わる前に動いておこう」という駆け込み需要が起きているのです。
🧭投資家への示唆
NYCの不動産市場は、米国の中でも規制・労働組合・コスト構造が非常に複雑です。
今回のニュースは、投資家が NYC の新築開発の収益性を評価する上で重要なポイントを示しています。
◾ 注目すべき点
- 「99戸 vs 100戸以上」では利益構造が全く変わる
- 労務費はNYC開発の最大リスク
- インセンティブ依存が大きく、政治リスクも大きい
- 2026年以降にルール変更の可能性
- NYC市場は依然として需要は強いが、参入コストが高すぎる
📝まとめ
- NYで99戸プロジェクトが異常増加(Q3だけで21件)
- 税制優遇 485-x を最大化するため、100戸以上の義務(25%アフォーダブル)を回避
- 100戸超で労務コストが急騰 → 開発業者が“99戸に合わせにいく”理由
- 新市政の政策不透明感から“駆け込み申請”の側面も
- NYC開発はコストと政策リスクの読みが必須
アメリカ不動産市場の中でも、
ニューヨークは特に「法律・コスト・政治」の3点が投資成否を分ける都市です。