米国最大の電力網「PJMインターコネクション」の管内で、電気料金が今後5年間で最大60%上昇する可能性があると警告が出ています。背景には、データセンターの急増による電力需要の急拡大と、新規発電供給の不足があります。
📈 電力価格が10倍超に急騰
PJMは7月に実施した2026〜2027年度の容量オークションで、ピーク時の電力供給価格が1MWあたり1日329.17ドルとなり、2024〜2025年度の28ドルから10倍以上に跳ね上がりました。
この結果、一般家庭の電気料金は月平均20ドル程度上がり、地域によっては2030年までに30〜60%の値上げになる見込みです。
🏢 データセンター需要が主因
- ノーザンバージニア、シカゴなどのデータセンター集積地がPJM管内に集中
- AI需要加速により、バージニア州ドミニオン電力エリアの需要予測は当初の3倍超(20,000MW増)
- PJMの需要増加要因の63%はデータセンターが占める(Monitoring Analytics調べ)
⚠️ 供給不足とインフラ負担
PJMは2,000件以上の新規発電プロジェクトを抱えるが、接続待ちが最長7年、多くが実現せず。
さらに、送電線建設や発電所建設には数十億ドル単位の投資が必要で、そのコストが一般利用者の電気料金に転嫁される恐れがあります。
例:ウェストバージニア州の利用者が、他州のデータセンター向け送電線費用4.4億ドルを負担する事例。
💡 対応策と規制改革の動き
- データセンター専用料金制度(例:オハイオ州で85%前払いを義務化)
- PJMの接続プロセス改革要求
- 州法改正により、公益事業者が自ら発電設備を保有・運営できるようにする動き(ペンシルベニア州、ニュージャージー州)
🔮 今後の見通し
PJM管内の電力供給逼迫は、データセンター需要が減速しない限り長期化する見込みです。公益事業者と州政府は、容量市場外での発電確保や直接契約(behind-the-meter)による供給など、市場依存ではない解決策を急ぐ必要があります。