新築供給の影響で賃料上昇が季節トレンドに逆らう動きに
全米の賃貸住宅市場において、通常は春から初夏にかけて加速するはずの賃料上昇が鈍化しています。
賃貸ポータル大手Apartment Listの最新レポートによると、**2025年5月の全米賃料指数の上昇率は前月比+0.4%**と、3月(+0.6%)、4月(+0.5%)と比較してやや減速しました。
「この上昇幅は金額にすると小さいものの、市場の軟化傾向を示唆しており、マクロ経済の不透明感が消費者心理に影響している可能性がある」と同社は分析しています。
■ 空室率は過去最高の7%、供給過多が継続
- 全米の空室率は7%に達し、2017年以降の統計で過去最高水準。
- ここ3年間、新築物件の大量供給により、入居率は緩やかに下降しています。
- 建設ラッシュのピークは過ぎたものの、今年も供給は堅調に続く見通し。
現在、全米100大都市のうち69都市で5月の家賃が上昇し、そのうち54都市では前年比でもプラス圏に回復しています。一方、新築供給が多かった都市では依然として前年比で賃料が下落しており、たとえば:
- オースティン:前年比-6.3%
- デンバー:-4.8%
- フェニックス:-3.1%
■ 賃料上昇トップはフレズノ、サンフランシスコも回復
逆に、カリフォルニア州フレズノは、前年比+5.9%と全米で最も高い賃料上昇率を記録。サンフランシスコ(+4.4%)がこれに続き、
その他にもプロビデンス(ロードアイランド州)、ハートフォード(コネチカット州)、シカゴ、ピッツバーグなどの北東部・中西部都市がトップ10入りしました。
■ 募集期間は短縮傾向も、供給過多の影響は依然大
2025年5月の募集から契約までの中央値は28日で、3月(30日)、1月(37日)と比較して徐々に短縮。これは季節的な傾向と一致しています。
しかし、2022年の最も需給が逼迫していた時期と比べると8日間長く、供給過多による影響が継続していることがわかります。
特に、全米で最も軟調な市場とされるオースティンでは、募集期間の中央値は38日と、他都市よりも明らかに長くなっています。
■ 今後の見通し:供給減速で再び賃料上昇へ?
Apartment Listは、今後の新築供給が減速すれば、市場は再び引き締まり、賃料上昇が全米的に回復すると予想しています。