~リモートワーク定着でオフィス縮小、再生利用の動きが加速~
2025年、アメリカのオフィス市場は大きな転換点を迎えています。新たに供給されるオフィス面積を、解体・用途変更される面積が初めて上回る見通しとなりました。これは少なくとも過去25年間で初めてのことです。
CBREによると、全米主要58都市では約2,330万平方フィート(約216万㎡)のオフィスが年内に解体または他用途へ転換される一方で、新規供給は約1,270万平方フィート(約118万㎡)にとどまる見込みです。
この背景には、新型コロナ以降に定着したリモートワーク文化の影響があり、現在も空室率は19%前後と高止まりしています。ただし、オフィス回帰の動きもあり、過去4四半期連続でネット吸収率(実質利用面積)がプラスに転じ、リース活動も前年比18%増加しました。
CBREのマイク・ワッツ氏は「市場にとっては良い兆し。古い建物が除却されることで空室率は改善し、建物オーナーにとってもメリットがある」と述べています。
また、用途変更(コンバージョン)も急増しており、今後数年でさらに8,500万平方フィート(約790万㎡)のオフィスが他用途へ転換予定。特に住宅(アパート・コンドミニアム)への転換が注目され、2016年以降で約3.3万戸が創出され、現在も約4.35万戸が計画中です。
ただし、コンバージョンには課題もあります。理想的な物件は限られ、建設費や資材コスト、金利の高さが障害となっています。
今後は、古いオフィスの除却とコンバージョンによって、市場の健全化と地域の活性化が進むと見られています。主要な恩恵を受けるのは、Vornado、BXP、Alexandria Real Estate、SL GreenなどのREITで、特に高品質な「クラスA」物件の賃料はすでに回復傾向にあります。