~2008年以来の水準へ回復、今後も高稼働が続く見通し~
アメリカのシニア向け住宅市場が、他の主要商業不動産(CRE)セクターを上回るパフォーマンスを見せています。2008年以来の高い稼働率が目前に迫っており、投資家からの注目も急上昇しています。
📈 稼働率が2008年ピークに迫る水準へ
NIC(National Investment Center)の最新レポートによると、2025年第1四半期のシニア住宅全体の稼働率は88.0%で、2008年のピークからわずか2.2ポイント差にまで回復しています。
– 一次市場(主要都市):87.4%(ピークまで2.7ポイント)
– 二次市場(地方都市):89.1%(ピークまで1.3ポイント)
地域 | 稼働率 | ピークまでの差 |
東北中部(East North Central) | 88.0% | 160bps |
中部大西洋(Mid-Atlantic) | 88.7% | 290bps |
山岳地域(Mountain) | 88.1% | 100bps |
北東部(Northeast) | 90.0% | 220bps |
太平洋沿岸(Pacific) | 87.4% | 380bps |
南東部(Southeast) | 86.9% | 220bps |
南西部(Southwest) | 87.0% | 160bps |
西北中部(West North Central) | 87.0% | 450bps |
🏆 かつて下位だった稼働率が業界トップに浮上
過去20年間、シニア住宅はアパート、オフィス、工場、モール、ストリップ型小売施設などと比較して5~6位の稼働率にとどまっていたのが実情でした。しかし、2023年と2024年に状況が一変し、業界トップの稼働率を記録するに至っています。
💰 投資家の関心が急上昇
ULI(Urban Land Institute)の調査によると、シニア住宅はデータセンターに次ぐ「今後3年間で最もリスク調整後リターンが高い投資対象」に選ばれました。
– 稼働率の上昇
– 高金利下での賃料の維持
– 資本調達の難しさ
⚠️ 投資リスクと課題
投資対象としての注目が高まる一方で、以下のような課題もあります。
– 労働力不足:特に看護・介護スタッフの確保が困難。現政権の移民政策や関税政策の影響もあり、人材流動性に制約。
– 新築コストの上昇:新築は既存物件よりもコスト高になっており、建設費がリプレイスメントコストを上回る状況が続く。
– 開発期間の長期化:モジュール建設やスマート設計などの新技術導入が進むが、建設完了まで数年を要するケースも多く、供給が追いつかない
🏘️ 需給バランスが稼働率と賃料を支える
供給の制約と需要の拡大が、稼働率上昇と家賃の底堅さを後押ししています。とくにニーズベース(要介護層)とライフスタイル志向(自立高齢者)両方で需要が堅調です。
🔍 まとめ
– シニア住宅は他のCREセクターを上回る稼働率へ
– 投資家からの関心が急拡大、特に機関・富裕層投資家
– 一方で、労働力確保と建築コストという構造的課題も顕在化
– 中長期視点での戦略的投資先として引き続き注目