2028年から1平方フィートあたり年間5ドルの課税案「SB 789」— 住宅購入支援に活用も
カリフォルニア州では、一定期間空室となっている商業用不動産に対して州全体で課税を行うという全米初の試みが進められています。上院法案「SB 789」は、1年間のうち182日以上(連続・非連続問わず)空室となった物件に対し、1平方フィートあたり年間5ドルの課税を行う内容となっています。
この法案は、ロサンゼルス郡内のバーバンクやサンフェルナンド・バレーを選挙区とするキャロライン・メンジバー上院議員によって提出されました。目的は以下の3つ:
- 地域経済の再活性化
- 空きビルによる近隣環境の悪化防止
- 初回住宅購入支援基金「California Dream for All Fund」への財源確保
対象外となるケースも明記
この課税は住宅用スペース(混合用途物件内)には適用されず、また以下のような場合も除外されます:
- 建築許可のもとで90日以上継続して改修工事中の物件
- 訴訟中、環境審査、許可遅延により使用不可能な物件
- 自然災害の影響を受け、使用不能と認定された物件
対象物件のオーナーは州税務当局(CDTFA)に登録し、毎年3月15日までにオンラインで空室日数、面積、適用除外項目などを報告する義務があります。虚偽申告があった場合、最大で課税額の75%に相当する罰金が科される可能性があります。
施行は2028年、初回納税は2029年から
SB 789が州議会の3分の2以上の賛成を得て、知事が署名すれば、2028年7月1日より施行され、2029年より課税が開始されます。また、2033年以降は、税の効果や費用を5年ごとに評価する予定です。
施行の行方には不透明感も
一方で、この法案の施行には憲法違反の可能性が指摘されています。
2023年11月、サンフランシスコ市が住居の空室に課税する「Empty Homes Act(通称:Proposition M)」に対して、地元の不動産業界団体が起こした訴訟で、裁判所は同法が違憲であるとの判断を下しました。
この法律では、3戸以上の建物で182日以上空き家となっているユニットに対し、年間2,500ドルから最大2万ドルの税金を課すものでした。訴訟では、連邦憲法の「財産権保護条項(Takings Clause)」および、カリフォルニア州の「エリス法(Ellis Act)」に違反していると主張されました。
現在、市はこの判決を控訴中ですが、今後の判決次第では、SB 789の施行にも影響を及ぼす可能性があります。