米国の物流不動産市場が、調整局面から本格的な回復へ向かい始めています。Eコマースだけでなく、先端製造業、データセンター、防衛産業、サプライチェーン再編が新たな需要を生み出しています。
2026年第2四半期の米国物流施設のネット・アブソープションは6,600万平方フィート、約613万㎡となり、4年ぶりの高水準に達しました。
入居面積の増加が新規完成面積を上回ったことで、既存物流施設の需給が引き締まり始めています。Prologisは、2026年末までに空室率がさらに0.3ポイント低下すると予測しています。
■ 年間需要も新規供給を上回る見通し
Prologisは、2026年通年のネット・アブソープションを2億2,000万平方フィート、約2,044万㎡と予測しています。
これに対して、新規完成は2億500万平方フィート、約1,904万㎡の見込みです。年間では需要が供給を約1,500万平方フィート上回る計算になります。
特に10万平方フィートを超える大型物流施設は、空室率が市場全体より0.6ポイント低く、建設中の物件も限られています。大型施設の賃貸活動は2025年平均を10~15%上回っており、利便性の高い物件は不足する可能性があります。
■ 需要を支える新しい業種
Eコマースや生活必需品は引き続き物流需要の基盤ですが、新たな成長分野として次の業種が挙げられています。
- 先端製造業
- データセンター建設関連
- 防衛産業
- 国内生産回帰や新しい国際供給網に関係する企業
地域別では、テキサス、米国南東部、中西部、サンフランシスコ・ベイエリアが特に好調です。
一方、住宅、自動車、家具、家電などの景気循環型産業は、まだ完全には回復していません。これらの業界が持ち直せば、物流需要がさらに増える可能性があります。
■ 賃料は上昇、開発は進みにくい
物流施設の賃料は、2026年第1四半期から第2四半期にかけて約0.7%上昇しました。
しかし、現在の市場賃料は、新しく同等の施設を建設するために必要な「再調達価格ベースの賃料」より約20%低いとされています。土地代、建築費、金利が高いため、賃料が上がっても新規開発の採算が合いにくい状態です。
そのため、希望条件に合う大型施設が見つからない企業の間では、自社仕様で建設するBuild-to-Suitへの関心が高まっています。
需要が回復していても、すべての物流施設が同じように評価されるわけではありません。投資判断では、高速道路・港湾・人口集積地へのアクセス、天井高、床荷重、トラックヤード、電力容量、テナントの業種、契約期間を確認する必要があります。
特に、データセンターや先端製造業に関連する需要では、広さだけでなく電力供給と設備対応力が重要になります。
米国物流市場は、供給過剰から物件不足へ転換しつつあります。今後は、単なる倉庫ではなく、立地・電力・建物機能を備えた施設の価値が一段と高まると考えられます。