団塊世代が次々と80歳を迎えるアメリカで、シニア向け住宅(高齢者住宅)の需要が急拡大しています。今後5年で400万人以上が80歳に達する見込みで、既にアクティブシニア住宅や介護付き住宅の入居率は急上昇。
一方で、新規供給は極端に不足しており、毎年10万床の新規ベッドが必要とされる中、2025年と2026年に建設されるのはわずか4,000戸程度にとどまる見通しです。
💡 Ventasの戦略と「長寿経済」
シニア住宅を中心とした不動産投資信託(REIT)のVentas(時価総額310億ドル/約4兆5,570億円)は、この需要拡大を「長寿経済」と位置づけて積極投資を進めています。
CEOのデブ・カファロ氏は、
「投資リターンは7%、IRRは10%台半ば。しかも取得価格は建て替えコストを下回っている」
と語り、全米850の住宅施設で入居率が上昇していることを強調しました。
🚨 供給不足の深刻さ
シニア住宅デベロッパー Aegis Living の創業者ドウェイン・クラーク氏は、
「水道のホースに風船をつけて膨らみ続けるようなもの。いつか破裂する」
と比喩し、供給不足の深刻さを警告しています。
- Aegisの平均家賃:約月1.2万ドル(約176万円)全ての費用込
- 住民は自宅売却益を活用して入居資金を確保するケースが多い
- 金利上昇で新規建設は停滞、既存施設の借換えも困難に
📈 投資家の視点
シニア住宅分野は投資家からも注目を集めています。
不動産投資会社 Harrison Street(運用資産550億ドル/約8兆円) は、昨年30%超のNOI増加を記録。
CIOのマイク・ゴードン氏は、
「過去20年で最も有望な投資タイミング」
と語り、コロナ禍で敬遠されていた高齢者施設が再び需要を集めていると説明しました。
🔑 まとめ
- 需要:団塊世代の高齢化で年率28%増の見込み
- 供給:新規建設は歴史的低水準
- 投資:REITや機関投資家が積極参入
高齢者住宅は、今後20年以上にわたり「アメリカ不動産の成長市場」として注目を集めそうです。