従来型アンカーテナントに代わる“新たな顔ぶれ”が集客力を牽引
米国では、かつてのショッピングモールの象徴だったMacy’sやSearsといった大型百貨店が次々と閉店し、空きスペースが増加しています。しかし近年、その空間を教会・大型書店・娯楽施設など、従来とは異なるテナントで埋める動きが加速。結果として、かつての売上の最大5〜6倍を生み出す事例も出ています。
📍 事例1:オハイオ州デイトンモールの「教会化」
- 1970年開業の老舗モール「デイトンモール」は、2018年にSearsとBon Tonが閉店し空洞化。
- 元Sears(約16万平方フィート)の一部を地元教会Crossroads Churchが取得し、9万平方フィートを礼拝堂・コミュニティ施設に改装。
- 教会はモールの営業時間に合わせて毎日開放され、週400〜500人の非信者来訪者も確保。
- 若者は礼拝後にフードコートや店舗で買い物を楽しみ、モール全体の回遊性向上に貢献。
📍 事例2:大型小売から複合施設へ
米大手モール運営会社CBL PropertiesのCEO、スティーブン・レボビッツ氏によると、空きスペースを複数の小規模店舗や飲食・娯楽施設に分割する戦略が奏功。
- 元Searsの売上が年間700万〜800万ドルだった場所が、複合化後には5〜6倍の売上に。
- テナント例:The Cheesecake Factory(レストラン)、Dick’s Sporting Goods(大型スポーツ用品店)、Dave & Buster’s(アミューズメント)、ホテルなど。
- ゲーム、ボウリング、レーザータグなど「体験型施設」の導入が集客を後押し。
📍 事例3:Barnes & Noble効果
- 書店チェーンBarnes & Nobleは、旧Forever 21などの大型空き店舗を新規出店候補に。
- 店舗面積は1,800〜2,200㎡(18,000〜22,000平方フィート)で、モール内の他業態と競合せず“クロスショッピング”効果を生む。
- ニューメキシコ州のCoronado Centerでは、Barnes & Nobleがモール来訪者の7.9%を占め、Macy’sやJCPenneyを上回る集客力に。
📊 モール復活の背景と今後の展望
- Gen Z(Z世代)の来店増加:コロナ後、リアルな交流や体験を求める傾向が強まり、モールは“コミュニティ空間”として再評価。
- 体験型&多目的化:ボウリング、ヨガ、映画、イベントなど、買い物以外の目的での来店を促進。
- ノスタルジー効果:Gen X・ミレニアル世代にとって、モールは青春時代の記憶を呼び起こす場所。
💬 モール運営者の声
- 「かつての百貨店依存からの脱却が進み、複合化で新しい客層を呼び込めている」(CBL Properties CEO)
- 「人々はショッピングセンターをコミュニティ空間として捉えている」(Brookfield Properties副社長)
- 「私たちはモールに再び活気と経済活動を取り戻したい」(Crossroads Church牧師)